第7話 命癒
あなたの国が永遠でありますように。 あなたの民が健やかでありますように
この祈りが――あなたに届きますように――
「――命癒」
治癒理法が体を癒していく。
彼女のかける命癒は、一級品以上のものである事は俺は誰よりも知っている。
彼女の優しい声が耳に入ってきた。
俺は彼女を見上げていた。
彼女が心配そうに俺を見ている。
(見るな)
拒絶が心に沸き上がる。
こんなものは幻想だ。
目をつぶり時間がたてば消えてしまうもの。
だから――
俺は知っている。
時間が経ては消えてしまうもの。
彼女の光が傷を癒す。
とっくに壊れ使い物にならなくなった存在を治癒していく。
「やめろ……」
言葉に出たのは拒否だった。
「俺を治す暇があったら……他の奴らを……」
「申し訳ありません……」
彼女は目を伏せる。
光は消えず以前として自分を照らしていた。
「俺は――只の――」
言葉が消える。
彼は虚ろなまま――
「…………」
少女が目を覚ますと視界一杯に空が広がっていた。
蒼い空から射す太陽が少女の目を優しく照らす。
「ここは……」
早綾が辺りを見回す。
目に映る光景は見知った空。
木々の匂い、見知った風守鎮守の杜の光景。
(私達……もしかして……)
ここが地獄の風景には見えない。
神罪人を信仰している自分達は地獄に落ちると世間から言われてきた。
しかし、ここが地獄の風景とは思えない。そうでないなら
(生きてる……)
早綾の脳裏に恐怖の光景が甦る。
心に刻みつけられた恐怖。魔物、そして魔族。
自身の体に手をあてる。トクトクと鳴る心臓の音。
生きているという実感だ。同時に痛みが襲ってくる。
ズキズキと揺れるように頭が痛む。頭痛、混濁。
記憶が混乱している。しかし痛みを押し殺し、早綾は必死に出来事を思い返していた。
(どういう事で、ござるか)
早綾は何があったかを思い返した。
あの凶暴な魔物達によって殺されたと思った。しかし
(傷が塞がっている……)
葉月が自身の傷を確認した所、貫かれた傷は塞がっていた。
さすがに痛みが完全に引いたわけではないが、動く事はできそうだ。
(いったい……なにが……)
考えがまとまらない。いったい何がおこりなぜ自分達は助かっているのか。
あの恐ろしい魔物、魔族が襲ってきた。
自分達は風守の地を守るために挑んだが敗れた――そして――
「うっ……」
早綾が言葉を失う。
思索は更なる衝撃に中断された。
目の前に映ったのは粉々に砕けた魔物の死骸。
滅裂した体。
肉が裂かれ、骨が砕けている。まるで血の泉。
血と臓物をぶちまけられ、魔物が絶命していた。
「あっ……」
フラッシュバックする戦いの光景。少女は思い出した。
あの魔物を倒した漆黒の風の存在を。
(夢じゃ……なかった……)
目の前に広がる魔物の屍が否応なく現実を突きつける。
早綾は漆黒の姿を思い出す。
魔物を倒すとはつまるところ、殺すという事だ。
殺し方に綺麗さも何もない。それはわかっている、わかっているのだ。
しかし、それでも魔物の殺し方は凄惨に過ぎた。
「…………」
少女は息を飲む。
これを成したのはこの魔物と同種か、もっとおぞましいものだ。
正義の味方とは縁遠い――
魔物よりもっとおぞましい存在がそれを食らい尽くしたとのだ。
(あの漆黒……)
覚えている。
自分達を助けた漆黒の存在を。
葉月は自分の体を触った。
「っ……」
頭をよぎる戦いの記憶。
自分達を襲った魔物の恐ろしい姿が脳裏に蘇る。
そして自分達を圧倒した魔族。
あのケグネスと名乗った魔族は自分達を圧倒した。
魔族の力に早綾達、くノ一は絶望したのだ。
そこで漆黒が現れた。
漆黒の風が魔者を倒し、魔族を滅ぼしたのだ。
あの漆黒がいなければ自分達は犯され
食いちぎられ、原形すら残さずズタズタにされていたであろう。
無論それは自分だけでなく、近くに倒れているいる下忍くノ一達も同じ事だ。
だからあの漆黒は――
(私達を……助けてくれたの……)
影を追うように早綾は辺りを見回した。
呵責ない破壊跡。これをやったのが魔物でないとしたら、日本国民を害した魔物に対する神の裁きを彷彿とさせた。
神の裁き、およそ日本の神観には似つかわしくない概念だ。
(あの漆黒は……いったい)
にわかには理解しがたい事態だった。
だが早綾がみた漆黒がこの魔物達を倒した。そして自分の命は助かった。
「うぅっ……」
うめき声が聞こえる。
視線をやると、アゲハが身じろぎしていた。
「アゲハちゃん!?」
早綾は急いで駆け寄り、アゲハを揺り起こした。
彼女達も傷が塞がっているようだった。
「早綾さん……ですか?……」
まだ意識が朦朧としている様だが苦しげな様子はない。
「……私達……」
アゲハは周りを見た後、自分の胸に手をあてた。
自分が生きているのを確認するように。
「……私達は助かったのですか……」
信じられないというようにアゲハが呟く。
コクリと葉月はうなづくと、アゲハは周りを見渡す。
「これは……」
アゲハも周りの光景に言葉を失う。
散乱する魔物の死骸。
「なっ……」
その光景にアゲハは言葉を失った。
鎮守の杜に散らばる、魔物の死体と臓物、そして大量の血。
空気に触れているだけで頭がグラグラしそうだ。
「――――」
アゲハもまた、覚えていた。忘れるはずもない。
自分達が殺されそうになった時に現れた存在を――
「……この魔物を倒したのは……」
アゲハが生唾をのみこみ、魔物の死骸を見回した。
滅裂しあたりいっぱいに血をぶちまけている。
退魔の忍として経験を積んだアゲハにとっても恐怖を覚える惨状。
「やはり……あの漆黒がやったのでしょうか」
「アゲハちゃんも覚えているでござるか?……」
「はい、アゲハめも覚えております。朧気ながら、ですが……」
早綾はアゲハに確認する。正直夢かと不安に思っていた面もあったが
あの陰が現実に存在するものだという事がわかった。
途中で気を失ったが、彼女達は朧気ながらも見ていた。魔物を倒す陰の存在を。
「私達……生きてる……」
アゲハもまた、自分の生を実感するように自分の掌を見つめた。
思い浮かべるのはあの漆黒の存在。
もしあの漆黒が現れなければ、ここに無惨に散らばり死体となっていたのは
魔物ではなく、彼女達だっただろう。
「虚神と……言ってたでござる……」
「……」
「ケグネスという魔族は、漆黒の事を、虚神って……アゲハちゃん。だったらあの漆黒は本当に――」
「……早綾さん、今はみなさんの容態を確かめましょう。今は何も判断できません」
「う、うん……」
アゲハは早綾の言葉を遮るように歩を進めた。
早綾とアゲハは倒れている。下忍達に駆け寄った。
「アゲハめが確認します」
アゲハは下忍の脈を見る。
「どうでござるか……」
早綾は息を飲みアゲハを見つめる。
喉に何かつっかたような感覚。
「……脈が……あります」
安堵したような、信じられないという気持ちが混じっていた。
「よかった……本当によかった……彼女達もなんとか、生きているみたいです」
アゲハと仲間達の脈を確認しながら、安堵の吐息をもらした。
下忍くノ一達はぐったりと倒れているが、命の危機は認められなかった。
無論全員が全員無事なわけではない。しかし、全滅、三割損耗の意味でない
全員死亡という最悪のシナリオは避けられた。
魔族を相手に圧倒的な絶望を経験した彼女はその事の尊さが理解できる。
(でも……なんで……でござるか)
瀕死の重傷を負っていた。
あのままならば、間違いなく死んでいただろう。
それは早綾達も例外ではない。
(あの姿……)
思い出す事があった。
それは漆黒が魔物を倒した後に現れた存在。
(あの回復理法……)
漆黒と異なり、癒された記憶は本当に無い。
しかし――
――あなたの国が永遠でありますように。 あなたの民が健やかでありますように
思い出すのは朧気な言葉。体を伝わった暖かい光。回復理法が体を治癒していく感覚だ。
だがあれほどの高位の回復理法は稀だろう。
漆黒とは真逆の気配であり、生命の気配に満ち満ちていた。
早綾とアゲハは互いの認識を確認した
「やはりアゲハちゃんもあの陰をみたの……」
「はい。あの恐ろしい黒の風。間違えようもありません」
「やっぱりあの漆黒がこの魔物達をやったの……」
「……間違いないかと」
「私達を助けてくれた、んだよね」
虚空に消えるように早綾が呟く。
「助けてくれた。私達を……」
その言葉にアゲハは息を吐いた。暗夜に灯火を見たような安心した少女のような表情を一瞬浮かべるが
「……そんな事は……ありえません」
だがそんな早綾に対して、
アゲハはかぶりを振った。その口調には重々しい諦観が宿っていた。
この十数年、彼女達を助けてくれるものなどいなかった。
心が擦れているというわけではない。しかし、今更進退窮まった危難の中彼女達を助ける存在などいるはずがないという諦めがあった。
「そうかもしれないけど……」
早綾も風守の一員だ。自分達が世間から迫害されている事は、身に染みて実感している。
アゲハは早綾より風守の現状を現実的に、悪く言えば悲観的に見る傾向があった。
「でも……もし……」
ポツリとアゲハが漏らした
「もしそうだとしたら……私達下忍はこの命を捧げなければいけないしょうね」
「アゲハちゃん……」
アゲハの表情はどこか救いを諦めきれない子供のような哀切がある。
命を捧げる、という言葉。
その言葉には色々なものが含まれている気がした。そしてそれは地に転がっている下忍も同じだろう。
周囲を見回す。
驚く事に周囲から力が全く感じられない。
あれほどの圧倒的な力を振るったのなら、理力の残滓が
なんらかの形で残っているはずだ。
しかし、その痕跡を見いだす事はできなかった。
この魔物を倒した存在はどこにいったのか。
男なのか女なのかすらも定かではない。
(あの漆黒は……いったい……)
煩悶しても答えはでない。
しかしその時――
「きゃあああぁぁぁぁ!!」
絶叫が響き渡った。
静寂を取り戻したはずの鎮守の杜に響き渡る悲鳴は、早綾とアゲハを
「この声っ……」
「葉月ちゃんでござる!!」
葉月の声だ。
「葉月ちゃん!!」
早綾が真っ先にかけより、アゲハがそれに続く。
「待って!! 一人では危険です」
しかし早綾は聞かず、声のした方へ駆け出していく。
(まさかまだ魔物が)
アゲハは胸中で舌打ちをする。
甘かった。
まだ魔物が残っていたと、アゲハは判断した。
あのせっぱつまった叫び声。修羅場を経験している葉月があれほどの大きな叫びを上げたのだ。
ともすれば先ほどの魔物を上回る人外魔境が現れてもおかしくはない。
「葉月ちゃん!!」
焦燥にかられ、早綾は叫び声がした方向へ急ぐ。
「はっ……」
心臓が早鐘を打つ。
彼女は見る――
目の前に広がる衝撃的な光景を――
「……」
草薙悠弥の目の前には国宝があった。
初夏の朝に射す木漏れ日を受け揺れている。
それは夢のドリームであり希望のホープ――おっぱい
「大丈夫、大丈夫か!?」
声がする。自分を呼んでいる。
揺れる胸、弾む心。
「おぉ……」
目の前の光景に、草薙は感嘆の声をあげた。
おっぱいだ
見てて幸せ
おっぱいだ
思わず一句詠んでしまった。
季語?そんなもんは知らぬ!
それよりも目の前のおっぱいだ。
見ているだけで癒される。
彼は光に手を伸ばす。
「気がついたか!?……」
少女が自分の顔をのぞきこむ。
少女は心から安心したような顔を見せた。
「君はいったい……なぜこんな所に……」
少し淡い髪色のロングヘアーの少女が草薙を真っ直ぐ見る。
彼女はどうやら何か疑問があるらしい。
だが疑問など、些細な事だ。目の前におっぱいがある事に比べれば。
「なぜここに……だと」
草薙は厳かに答える。
「私は葉月というんだ。君は……うっ!?
うめき声をあげ、葉月は
葉月は少し胸を押さえた。かがんで胸を抑える。
「やはり……魔族の呪毒まではどうにかならない……か」
苦しげに葉月が呟いた
「…………」
草薙の目が変わった。
意識せず胸が突き出されて扇状的なポーズになっている。
しかし草薙はそこには一切頓着せず、呪毒に喘いだ葉月の容態を観察するような
目に切り替わっている。その草薙の変化に葉月は気づけなかった。
「あっ!?……それよりもまずは怪我がないか確認しないとな。傷薬、必要か?」
ゴソゴソと、葉月は傷薬を探し始めた。
目の前の少女はどうやら自分を心配してくれているようだ。
少女も正直、あまり調子が良さそうに見えないがそれでも草薙を心配している。
それが、彼女の優しい気質を表しているかのようだった。
「もしかして……君が……」
少女が躊躇いながらも草薙を見た。
「君が……私達を……」
息を飲み少女が草薙を見た。彼がもしかして――自分達の命を
真っ直ぐに。
「うむ!!」
「え゛っ!?」
草薙は感嘆の声をあげる。
目の前にはあるのだ――希望の半円が
目の前で揺れているのだ――癒しの半円が。
――おっぱいが――
その光はプルンプルンと揺れていた。
みっちり詰まった柔肉がその存在を主張していた。
――おっぱいだ。
「助けてくれたの――」
「掴むのだ!!」
人生を掴むように手を伸ばした。
光りを掴む――おっぱいを
「かっ?……」
葉月が声を漏らす。
「祭じゃ!!」
草薙が叫んだ。そして草薙が揉んだ――おっぱいを。
ぎゅむうぅっと揉み掴んだのだ!
「なあぁぁっ」
葉月は恥じらいの声を上げる。
自分の胸にはしる手の感触に葉月は赤面する。。
「おっぱい祭りじゃ!!!」
乙女の恥じらいも
ゴクリ、と草薙は息を飲む。
素晴らしい、草薙は胸の内にある衝動を形にするが如く、葉月のたわわに実った乳を揉む。手の平に
「揉む!! 」
もみもみと擬音がなるが如く揉む。
「きゃっ!?わわっ……」
葉月が本能的に声を上げる。
草薙が葉月の乳を――揉んでいた
「きゃあああああぁぁぁ」
少女が叫び声をあげた。
もみしだく草薙の手。
もみしだかれる葉月の乳。
草薙の手に伝わるのは
極上の乳の感触。
大きい!! でかい!! 柔らかい!!
「あっ……あのっ……」
目の前の少女はパクパクと口を開けている。
構わずそれを――それを揉む。
おっぱいを――揉む。
「何を――うあぁっ……」
葉月が
ズブズブと擬音がするような勢いで乳の
ぐにゅり、と柔らかい乳肉の形が変わった。
……柔らかい。半端ではない。
硬直する少女をよそに草薙は揉み続けた。
「あっ……うあぁっ……」
葉月は動けない。
先ほどの戦闘で死にかけ、体力がごっそり抜け落ちている。
だがそれ以上に男の堂々としたもみっぷりに度肝を抜かれた。
葉月の頭の中が嵐のように混濁する。
葉月は彼になにか運命めいたものを感じていた。
「や、やめっ……」
その幻想は乳を揉む手によって壮大にぶっ壊された。
なんかもう有り得ない。
それを揉む。
柔らかい乳肉の形が変わった。
乳肉に指が沈む。
ぎゅむうぅっという音まで聞こえてきそうだ。
柔らかい! 半端ではない!!
硬直する少女をよそに草薙は揉み続けた。
「きゃっ……」
限界だった。
「きゃあああああああああ」
静寂の鎮守の杜に少女の絶叫が響き渡った。
「時に大きな乳の娘よ」
葉月の悲鳴をそよ風の如く受け流し、草薙は言った。
完全無欠の変態。
「豆を食べているのか!?」
「えっ!?」
「ここまで大きくなるには食べ者が重要だ。それは歴史が!科学が!理が証明している!!故に聞く、豆を食べているのかね!?」
「あぁ、はい食べている食べてます! 食べてます!!」
「なるほどおぉぉ、風守の豆は現在でも
見事な業を持って生成されているようだ」
葉月が絶句する。
ヤバイこれはヤバイ。
葉月の頭が全力で警告を出す。
この男は乳をもむ事で、葉月の栄養状態はおろか、摂取している豆。
それも風守秘伝の豆の状態をいいあてたのだ。
乳をもんで摂取している豆をあてるなど、変態を通り越してもはや別種の生き物だ。
侮蔑と恐怖を三段ほど通り超して、なんかもう何も考えられない。
「あっ……うあぁっ……」
葉月は動けない。
先ほどの戦闘で死にかけ、体力がごっそり抜け落ちている、だがそれ以上に男の堂々としたもみっぷりに度肝を抜かれた。
葉月の頭の中が嵐のように混濁する。
葉月は彼になにか運命的ものを感じていた。
「うああぁ……っ」
その幻想は乳を揉む手によって壮大に打ち砕かれた。
硬直して力が出ない。
それに葉月は先ほどの戦いで、魔族の呪毒を受けている。こうしている今も呪毒が
体を駆け抜けて――駆け抜けて――
(えっ……)
体に違和感。胸を疼き、食らうような呪毒の感触が消えている。
なんて柔らかさだ。
そして――
「何が!? 何があったのですか!?」
また一人、新たな少女がやってきた。
黒髪の前髪を切りそろえている美しい少女。
豊かな胸元には蝶の紋様が刻まれている。
「こ、これは!?」
その光景を見てアゲハは狼狽した。
アゲハは凍り付いた。アゲハが想像していたのは魔物の姿だった。
余力のない状況だったが、危機に瀕している仲間を見捨てるという選択肢はない。決死の覚悟で彼女は仲間の危機にかけつけた――つもりだった。
目の前にはおっぱいを揉みまくられている友人葉月の姿と――
「よぉっ」
この乳揉み男である。
堂々と乳揉む男の姿だった。
「胸を――揉んでいる……男の……方!? へっえっ!?」
なんかもう事実を読み上げるしかできない位のショッキング案件だった。
「うああぁぁぁぁ――」
「くっ……この乳を育てた大豆!? この感触! このさわり心地。この乳を育てた大地! 食物! 大豆良き業で作られた乳!大豆!乳大豆!!
つまり、豆・乳!!」
草薙は一心不乱に揉む。
「う、うわあぁぁーーーー」
「豆乳! そうだこれこそが豆乳!!。あぁそっか!!童貞でも豆乳を飲めばいいのだ。豆乳のめばそれは巨乳の乳と思えば安らかに!!安らかに生きていける!!」
端的にいってカオスだった。
「……………………」
事態を理解するのにアゲハはたっぷり沈黙した。
「よぉ……」
威風堂々と草薙は挨拶した。
まるで「乳揉みは国民の義務です」といわんばかりである
「あっはい……こんにちは」
ぺこり思わず挨拶してしまった。
「草薙悠弥だ、宜しく頼む」
「あっ、アゲハめはアゲハといいます」
そして訪れる沈黙。草薙は向き直る。
「…………」
「しっかりいぃぃ!! 気を!気をしっかりもつでござるアゲハちゃん!!なんかもう目をそらしたい気持ちはすんごいわかるけど、戦わなきゃ現実と!!」
あまりの事態にアゲハは困惑していた。しかしアゲハはなんとか気を取り直した。
「そ、そうです。あなた! いえ草薙さん !? そんな事をしてはいけません!! そういう事は色術の訓練かお付き合いしてる方達同士でないと……」
アゲハがそういいかけた時後ろから足音がした。
「なっ……」
ぞろぞろと、後ろから女達が続く。
アゲハに続いた下忍くノ一達も驚いている。
「あっ……あっ……」
葉月は茫然として少女の登場にはほぼ気づけない。
「アゲハちゃぁん!? ハヅキチを助けてやってくれでござる~~」
「あああああ」
葉月はテンぱっていた。
しかしこれは酷い。
「葉月!?」
「くっ!? やめなさい」
下忍くノ一達が草薙を止めようと駆ける。
葉月が乳を揉まれている。
しかし先ほどの血で血を洗うような戦闘の後だ。
これが先ほどの魔物なら胸骨をへし折られていただろう。
葉月への接近行為には恐ろしい攻撃意図が含まれているとくノ一が判断したのは当然の事だった。
先ほどの苦い戦闘のせいか体が満足に動かない。
下忍が攻撃を繰り出した。
確かにとらえた攻撃の先――そこで草薙が――消えた。
「ど、どこに――!?」
ガツリ、と後ろを掴まれた。
「ま、まずい……」
ガッツリと背中から動きを封じ。先ほどの魔物に捕まった時、生死をさまようほどのダメージを負った。殺られる、とくノ一が思った時
「なっ……」
その手は、魔物のようにくノ一の肉体をへし折るでもなく内蔵をつぶすのでもなかった。――乳を揉んだ。
「ま、まずい……」
完全に動きを封じられ、ポニーテールくノ一はなすがまま乳を揉みし抱かれる。その揉む勢いがこれまた凄い。
揉みつくされそうなほどだ。
「う、うわあぁぁ」
死の恐怖したくノ一はひたすら、乳を揉みしだかれる。
あまりの衝撃と乳をもみしだく感触に女は舌を突き出し身をよじらせる。
「くっ……なんて育っているのだ!!」
草薙は喝采をあげた。
こいつはやばい!熱い!!
柔らかいのだ。
極上の肉である。
目の前にあるだけで目眩がする。
この球体だけで胸の高鳴りがやばい。
酩酊する感覚。真理はここにあり。
「くっ…おのれ!?」
あくまで取り押さえようとするくノ一達。しかし
「ふうぅぅーはははははは!!」
草薙がすんごい動きをした。
くの一が取り押さえようとするがニュルリと草薙が回避する。
「あなたはいったい何者――」
「――それもまた良し」
堂々と乳を揉みながら、男はそういった。
//ダメージCGピンク
「えっ」
ぎゅむぅっと、草薙は下忍の乳を揉んだ。
――それもまた良し
//ダメージCGお団子
「なっ」
既に二人揉んだ。
「次だ! nextだ!! 止められん。もう誰にも俺を止められませんよ!」
「おっ!?」
キラァンと草薙の目が光った。
邪悪な目で追撃するくノ一を見る。
「くっ……」
草薙の勢いにくノ一はたじろぐ。
「もう誰も俺を止められませんよ!!」
草薙が凄まじい勢いで突っ込む。
その瞬間――
――雷よ! 魔を討て――
凛とした声が鎮守の杜に響いた。
「なんですか!?(喜) 草薙陛下は乳揉みの最中ですよ!!(喜)」
草薙がゲスさMAXな呟きをした瞬間――
//
「ぬわああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー」
草薙の叫びが上がった。
草薙悠弥、炎上。乳揉み案件で大炎上である。
草薙の体が燃えあがる
体中を奔ったのは雷。
ビリビリと肉体をはしる数百万ボルトの電流。
「ぬわああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー」
燃える痺れる火を吹き上げる。
雷火が体全身を駆け抜けた。
そしてその後――
「ひでぶうぅぅ!?」
悪役がやられる様な
そして更なる衝撃が草薙を襲う。
「ゴキィン」
なんかへし折れる音がした。
(おぉっとぉ~なんかマジなんかへし折れる音してんですけどぉ~)
//CG
顔面に突き刺さった両足。
それは一言でいえば「ドロップキック」。
ものすんごいドロップキックがとんできた。
「むああぁぉぉぉーーーー!!」
ものすんごい顔をして草薙が吹っ飛んでいく。
「あ゛!?あぁーーっとーーーーーー!?ドロップキックが変態さんの顔面に突き刺さったでござるーーーー!!」
早綾が絶叫して実況。
プロレス解説ばりのテンションでドロップキックをモロに受けた草薙の状況を説明してのけた。
「ぐぶふぁ」
草薙の不細工な顔が更に歪む。
半端なダメージではない。
「こんのド屑がぁああ!!」
そして響いたのはマジ半端ない怒声。凄い感情的だが全く以て反論できない。
「なぁーーにさらしてんじゃーーこのどへんたーーーい!!」
表れたツインテールの悪魔。
美しい少女だった。
凛とした声がに響く。宝石のような瞳は苛烈な意志を秘め、均整にとれた全身は太陽を溶かしたように活力に溢れていた。
明らかにやばい音をたてて、草薙の顔面に直撃したドロップキック。
「ラ、ラム!」
「ムーちゃん!!」
葉月と早綾が少女の名を呼ぶ。
降り立った少女は、ドロップキックを受け、やばい目をして倒れている
草薙に
「このラム様がきたからにはオラ死ねやああぁぁ」
名乗りたい欲求よりも殺したい欲求が勝ったらしい。
言葉は物理攻撃に変わった。ヤクザキックが草薙を蹴り飛ばす
「だらっしゃーーーーー」
凄まじい攻撃だ。
でも絶対に許さない、という意志が込められたドロップキックだった。
ふっとんだ草薙が倒れ伏す。
ラムがヤクザキックをかました。
ゲシゲシと音をたてて死にかけの男を容赦なく追撃する。
ゲシゲシゲシゲシ蹴りまくる。ドロップキックを食らって動けない
草薙を――顔を頭を腹を蹴りまくる。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬちんでまう!!」
草薙が叫んだ。知った事ではないとラムが蹴りまくる。
「やめて、やめてください! 死んでしまいます」
目の前で繰り広げられる悲惨な光景にアゲハはラムへ
静止の声をかけたが。
「おら死ねやあああぁぁこの」
ドガシャァ!?
っと蹴り飛ばす音が響いた。全く止める様子がない。
「あの……その……もうやめてやって」
乳を揉まれた当人すらも
どん引きするような、暴行
その凄惨な様子に葉月達はどん引きしている。
「だらっしゃーーーーー」
しかし全くやめる様子のないツインテール。
「ぐぼぁ」
数十発めのヤクザキックを顔面に受け、草薙は盛大なうめき声をあげた。
このままでは俺、ツインテールに殺されます。
そんな事を思う草薙に容赦なくツインテールは追撃のヤクザキックをかます。
「あんたが……」
少女は指を草薙へ突きつける
そして彼女は大きく口をあけ叫んだ。
「あんたが魔物ねえぇぇぇ!!」
ラムはそんな事をいってのけた。
「え゛っ!?」
「あっ……」
「はい?」
魔物……えっ? なんだって?
そんな葉月達は思わず大口をあけてしまう。
ツインテールの壮大な勘違いに、葉月が早綾くノ一達が間の抜けた声を漏らした。
確かにこの男がヤバイのはなんかもう理解できる。
だが彼女達を屠り弄ぼうとした魔物や魔族ではないだろう。
「強い魔力を感じて急いできたら、
恐ろしい奴がいたもんだわ!!この野郎」
ラムはそこでもう一発ヤクザキックを脇腹にぶっこむ。蹴りすぎである。
「いや……その……違っ」
確かに魔物じみているが魔物ではない。
葉月はツインテールの勘違いを止めようとするが……
「おら死ねやぁぁぁぁぁ!!」
全く止まる気配なし。
ゲシゲシとツインテールの少女は草薙を蹴り続ける。
俗にいう死体蹴りだ。まじはんぱない。
「ま、待て! 待ってくれ!、それ以上やると死んでしまう!!」
「当たり前でしょ!殺すために殺ってんのよ!!」
ツインテールの目は完全にイっていた。
「くっ、財政難で豊豆しか食べるものがないから、豊豆食べまくって
おっぱい大きくなった下忍のぉぉ!?乳を揉むなんてぇぇ!! この外道者ぉぉぉぉぉ」
げしこーんとツインテールのサッカーボールキックが炸裂した。
「死ね死ね今すぐに死んでしまえこのど屑がああぁぁぁ」
「も、もう許してやってくれでござるぅぅ~~」
あまりの凄惨な光景に早綾がツインテールの腰にしがみついた。
「くっ」
ラムは迷う。これが魔物なら迷わず反撃しただろうが、相手は少女である。
さすがに狂気じみった制裁を行うラムも反撃に迎撃せずに、腰ごと倒れた。
「お、おい!? だ、大丈夫か!?」
葉月がフルボッコの草薙に駆け寄る。
「これは……」
思わず呻く葉月。
草薙の様子たるや燦々たるものだった。
これがTVであったらモザイク不可避。
とても子供には見せられない状態になっている。
凄まじくボコボコだった。
「グボァッ!」
草薙血を吐く死にかけていた。
「これは酷い……」
ごくりと葉月が息を飲む。
「邪魔よどきなさい!!」
早綾を張り倒したラムが突っ込んできた。
「ひいいぃぃ」
ラムが葉月を容赦なく張り倒しす。ズザザァっと葉月が吹っ飛んだ。
そして草薙に追撃のヤクザキックをぶちかます。
「ふんごろがっきぃ」
草薙が言語を絶するうめき声をあげた。
「もういい、もうやめて!やめてやってくれ!?」
あまりの殴りっぷりに葉月が狼狽する。
「はっ!? 何いってんの!? これから! これからよ!! 燃え上がるよわブン殴るわよ!!」
ラムまじ半端ないバーニングだった。
足を振り上げようとする。しかし、その蹴りが空を切った。
「えっ……」
空の感触に少女が疑問の声を漏らす。
「そうそう何度も蹴られては困る。死んでしまうからな」
草薙が立っていた。
「あんたなんで……」
「あぁ、乳を揉んでいなければ即死だった」
草薙が右手を、葉月の乳を揉んだ手を大切なものを見据えた。
違和感があった。彼女の攻撃は草薙をとらえたはずだった。
しかし――
「なにっ……」
必中を意識した一撃は
「上等じゃないのこのくそ魔物がぁぁ!!」
血気さかんにラムは草薙に突っ込む。
雷撃を纏った一撃の用意だ。
迅雷一閃、男の頭を吹き飛ばす威力を有するだろう。
「――」
その時、ぐらり、と男の体勢が崩れた。
真っ直ぐな立ち姿勢から、地に
やはりダメージが残っている。
あれだけボコボコにしたのだから当然だ。
だがこの男は葉月の乳を揉んだのだ。
まだこの程度ではすまさない。
そう思い、少女は容赦なく草薙へ一撃を振りおろすが――
「えっ……」。
ヒットを確信した一撃が――外れた。
「なっ」
振り抜かれた大振りの一撃が虚しく空を切る。
――――――――
背中を駆け抜ける悪寒。
魔的な速度で接近する気配。
ラムの攻撃の刹那、草薙がラムに接近。
「っつ!?」
ラムの心胆が凍りつく。
そして、交わした男の表情を見た時、少女の心胆は凍り付いた。
(!? 誘われた)
少女は気づく、これは誘いだったと。
散々打撃を受け、ダメージが溜まった状態があるという事を「当然」と
認識させていた。
ボロボロの状態で、対峙。そうしてダメージで体勢が崩れて当然と――そう思い込まされたのだ。
そして引き出された結果は、止めの一撃を完全に交わされた、隙だらけの状態を晒した
という結果だ。
ラムが愕然とする。
目の前には、一切の感情を無くした男が迫りそして
「なっ」
更に視界から消失。
次の刹那、ラムは後ろをとられていた。息を飲む暇すらも与えない。
完全に虚を突かれた。
男の手がラムの急所に――首に伸びた。
その冷たい感触がラムに触れた。
「――!?」
ラムの喉が停止する。驚愕の事態。
ゾッとする感覚が総身を覆い尽くす。
感覚が反転する。
静止した心に這い出るように、冷たい言葉が響いた。
「――隙だらけだな。」
ゾッとするような冷たい声。
血の通った人間とは思えない様な冷たさがった。
草薙の言葉にラムの背筋が凍る。
それまで感じた事のないような殺気。
――
ラムが絶句する。
背後から感じる気配はこれまで感じた事のないものだった
(なに、こいつ……)
首筋に手を置かれた。その感触に身が総身が震える。
草薙の手の感触は、今まで触れたどんなものよりも冷たい。
死そのものを連想させた。
――殺られる
そう、生物としての本能が告げた。少女は死を覚悟する。
しかしそこで起こったのはとんでもない出来事だった。
「ぶほほほほほ!」
埒外の出来事だった。
響くとんでもなくゲスい声。
流れるように男は、ラムの乳を――揉んだ。
「なっ!?」
「祭りじゃ!! おっぱい祭じゃ!!!」
更に斜め上をいく所業だった。
「なななななあああぁぁぁぁ!?」
「はああぁぁぁぁぁぁ!?」
「はわわわわ……」
早綾が尻餅をついていた。いとも容易く行われるえげつない行為に、早綾は心底震えていた。
「ゆ、勇者でござる!? ど変態勇者でござるぅぅーーー」
「その通り――俺は等しくど変態だとも」
草薙悠弥は厳かに変態を宣言する。
わかっている。これはアウトだ。
明らかに揉んではいけない相手を揉んだ。
世の中には二種類の女性がいる。
乳をもんでいい女性と、乳をもんではいけない女性だ。
このラムという少女は明らかに後者!
構わん知らんぞ、鬱陶しいのだ。
揉むべきだと思った。だから揉んだ。彼は己の道を往った。
「うむ、サイズは劣る。どうしようもないな。まぁ気にするな」
「ななな」」
全員が全員巨乳である必要など全く無い。小さくともそれもまた良し。大きな乳は小さな乳によって引き立ち、小さな乳もまた、大きな乳によって引き立つ。
胸に貴賤はないのだ」
そういって彼はラムの肩をポン、と叩いた。
――プチン
切れた。何かが。ラムの中の何かがキレきった。もう何も考えられなかった。
「いい加減に……」
「あっなんだって。まぁ落ち着けよ。ほれ」
プニプニ。
そういってもう一回揉んだ瞬間――
「ええ加減にしとけよこのどへんたーーーい」
響く怒髪天
怒りに比例するように雷が膨れ上がる。罪人を裁く為の雷光だ。
問答無用の怒りの雷。
それを見て、草薙悠弥は思わず呟いた。
「へへっそりゃ……そうか……」
草薙を納得したように、自分に迫る雷を見据えた。
「あんだけ揉めば…………そうなるよな」
だが後悔はない。
まるで揉んだ感触を噛み締めるように、彼はググっと拳を握った。
後悔はない。男としてこれほどの本懐があろうか。
ならば――
――それもまた良し
雷光が視界を塗りつぶす。
草薙悠弥に法の裁きが炸裂した。