73話

悠久ノ風 第73話

73話 


「ガアアアアアアアア!!」

魔物が向かう。
魔物が走り出す。
魔物が飛び立つ。

「――」

神に座す草薙悠弥。
魔軍は確信していた。

――あれはまずい

魔物が狙うは中央司令部を撃砕した草薙悠弥。
座を掌握した草薙悠弥は魔軍に大きな打撃を与えうる。
だがそんな理屈とは関係なく。

――殺さなければ殺される。

その確信があった。
原初の生存本能が魔軍を過剰極まる鏖殺の進軍に駆り立てる。
空が漆黒に染め上げられた。
空が魔物で埋め尽くされる。
只一つの標的に向かい、魔軍が群れを成して進撃する。

それは正に万鬼魔行。

その規模その殺気たるや並みのものではない。

その魔軍の規模は正しく空前絶後。

――1万を超える
――3万を超える
――5万を超える
――10万を超える

尚膨れ上がる、吾の総軍
並みのものではない。

ありえないほどの大軍勢が集結していた。

百万の軍勢に対して、虚神は只一人。

「――来たな」

だが虚神はゆらがない。

ここで殺す。

ここで滅ぼす。

湧き上がる力。
満ちていく魂。

「上等だああぁぁぁぁ!!!」

虚神は吼える。

「全軍かかってこいやあああ!!」

百万の軍勢にケンカを売った。

――とんでもない馬鹿野郎。

「ガアアアアアアアアアアァァ!!」

狂乱の万魔軍は吼える。
その嘶きは日本中を震撼させた。

空を多い尽くす大軍勢。

進撃する魔軍に天が震撼する。

日本の運命を決める――風が吹く。