72話
響く虚神の誓言。
瞬間、蒼の風が吹きすさぶ。
蒼の柱が屹立し天へあがる。
全てを染めるような鮮烈な蒼。
戦場に在ってそれを無視する事など誰にもできない。
何よりも早く敵の目に止まり、誰よりも敵の攻撃が集中するような
敵の攻撃を一手に引き受けるような蒼―――蒼生守護の風
その風を見た。
魔が見た。
神が見た
人が見た。
そして――
「「オオオオオオオオオオォォォ!!」」
魔が咆哮する。
殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!
吹き上がる敵意と殺意。
草薙悠弥の宣戦の布告をガルディゲンの魔軍は殺意をもって応えたのだ。
「「「Gaaaaaaa!!!」」」
日本人への殺戮を止めた魔物達が一斉に創世神座の方向へ気勢をあげる。
止まる
止まる
虐殺が停止する。
殺戮が止まり、万魔がその破壊の方向を一つとしたのだ。
「AAAAAAAAAAAAHH」
日本中の虐殺者達が吼え猛る。
(あれを殺さないと)
(――殺される)
――虚神。
奴は駄目だ。国敵を殺す絶対的な存在。
魔物を突き動かしたのは只一つ。
生物として最も上位にあるもの――生存本能だった。
(――殺さなければ殺される)
「AAAAAAAAAAAAHH」
日本中の虐殺者達が吼え猛る。
(あれを殺さないと)
(――殺される)
全ての国敵が集結する。
たった一人に向けて、恐るべき万魔の行軍が開始される。
もはや意識は日本の一般人に非ず。
まずは貴様だ虚神。殺す殺す骨も残さず食い殺す。
貴様が我らの生殺与奪を握ったつもりでいるのが地上最強に気にくわない。
――死ね死ね死ね死ね殺す殺す殺す殺す
――殺さなければ殺される。
怒りと恐怖が混ざった殺意の波濤がたぎる。
◆
「――全軍やつを殺せ」
リュシオンが動く。
よくぞ吠えたぞ虚神。
ただ喰われるだけの餌となりさがったこの国で。
その傷だらけの体でよくぞ吠えた。
「天軍を差し向けろ。今度こそやつを殺せ」
「塵一つ残すな」
◆
「OOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHH」
魔物の本能が警鐘を鳴らす。
魔軍の魔力供給源でもある創世神座を虚神は掌握している。
これを壊されれば、魔物にとっての致命傷になりうるのだ。
10万が死に絶え、90万がダメージを負うだろう。
それでも虐殺は続行可能だが、自分が死ぬかもしれない状況で座して裁きを待つなど
魔の者が許すはずもないのだ。
(一刻も早く)
(一瞬でも早く)
――あの男を殺せ
全ての魔物の動きが止まった。
全ての日本への破壊が止んだ。
全ての日本人への攻撃が止まった。
罪なき日本人への虐殺を停止させた。
全ての攻撃が草薙悠弥に向けられる。
「おうおう! 来やがるか国敵ども!!」
敵軍の中央で座を握る草薙が猛った。
虐殺が止まった。そしてその暴力性が自分に来た。
間違いなくデッドラインを100歩は超えた絶対の危険。
「――計算通り」
笑う。
「――理想通りぃぃぃぃ!」
笑う。虚神の無道戦術。
「まとめて――」
あとはやるのみ。。
「かかってこいやああぁぁぁぁ!!」
◆
「あはっああははははははははははははははは!!」
爆笑する壊理。
「やばいよ絶対狂ってる!
面白すぎる! 本当に面白すぎるよ虚神!!」
壊理・ユダ。ロンギヌスの背神が笑う。
違う! 草薙悠弥は違うのだ。
覚悟が違う。
狂気が違う。
「やはり君は最高だよ虚神!」
誰よりも正常に狂ってる!
「さぁ見せてくれ! まつろわぬ民……失われし十神族に見せてくれ」
それが虚神――。
「国家の真を!」
背神の神殺し満天にうたいあげる。
「神風を!」
◆
「――神理」
草薙悠弥は掲げる。
草薙悠弥は対峙する。
百万の軍勢が攻めてくる中、只一人。
蒼生を守ると。
国敵を滅ぼすと。
神理を紡ぐ。
「――神風」
風が吹く。
侵略の絶滅魔軍を討ち滅ぼす。
神ノ風が吹く。