66話
嵐が吹いていた。
討滅の嵐が人型となり刃となる。
魔神はその光景に息を飲んだ。
「無謀の極み……」
昔から草薙悠弥という存在は魔大国ガルディゲンと戦ってきた。
無道の極み。
道を知らず
恥を知らず
手段を選ばず。
だが――結果は残す。
「ここまでやるとはな」
草薙悠弥の戦いに魔神は驚愕を禁じ得なかった。
創世神器の力を己に流し込み、直接中枢へ特攻をかける。決死というにも生易しい狂気の所業。
だが性質が悪い事にそれが恐るべき計算の上に成り立っているのだ。
現在、戦力の要は出払っている。
全国で桁違いの力を有する存在が戦っているのだ。
いずれ数の力を以て圧殺する予定だった。中枢は手薄になるのは事実。
戦っている者の思惑は様々。
十人十色という言葉ではおよばぬほどの幾千幾万の思惑がある。
(それを総て含めた……この戦略か)
神算というにはあまりも暴挙。
鬼謀というにはあまりにも綿密。
……これが
――無道か
◆
「オオオオオッ!?」
幾多の魔族を滅ぼす。
幾千の魔を滅ぼしながら、草薙悠弥は天を駆ける。
草薙の無道戦術が魔神の中枢へ
肉薄する。
防壁があった。
だが草薙の戦略によって中枢の防壁は弱体化している。
「おおおぉぉ」
突き破る。
(――後は根性だ)
薙ぎ払い滅ぼし滅裂。
そして草薙悠弥は中枢へ到達しようとしていた。
意志を帯びた伝説の剣を真っ直ぐに、ぶつける。
――静止する時間。
真澄の刻。
草薙の蒼光と中枢を守る防壁の紫色が衝突し――
ドゴオオオオオ!!
草薙の総身が砕け散らんばかりの
衝撃が総身にはしる。
だが――
バアアアアン!!
中枢の防護壁が砕け散り爆散する。
「おおおおお」
励起する神嵐。
草薙悠弥の神理が爆発する。
凄絶な蒼嵐に周囲の魔族は撃滅されていた。
「馬鹿な……」
有り得ない所行。
有り得ない力。
それは創世神器が持つ力であり――
「――国敵討滅」
草薙悠弥のシンリの力だった。
創世神器、無明。
一気に神の座へ到達した。
そして――
「――――」
「――――」
視線が交差する。
一瞬の出来事。
然して十分だった。
「――殺す」
「――滅ぼす」
始まる戦い。
進行する一億総殺。
虚神と魔神。
日本の命運を決める戦いが始まろうとしていた。