65話

悠久ノ風 第65話

65話 


「やはり来たか」

血を浴び立つ者があった。
千を超える屍の中に一人立つ。
人の死骸があった。
魔の死骸があった。
全てを打倒した存在があった。

「貴様の真を見せてみろ」

――真神真人。
巌を形にしたかのような容貌。

真実の人。
真実の神。

「問おう。神とは何か」

「一人でも多くの人間を幸せにする存在だ」

殺したらそれ以上の人間の命を助ければいい。
不幸にしてしまったららそれ以上のものを幸せにすればいい。

――なんて俗物。
つまりは最大多数の最大幸福を求めるのだという。

奴は助ける
奴はやる。

この絶望の淵にあって――

創世神器を手にした者は手を掲げる。

ガルディゲン、リュシオン。
そして十三帝将第一位――真神真人。

そして神風のはじまりにおいて最初の虚神と戦った存在。

凄まじき力。
湧出する魂の理。

創世神器が隆起する。

リュシオンは武力の神器を奪取した。
ガルディゲンは秩序の創世神器を奪取した。
そしてガルディゲンがとろうとした創世神器はをとったのは――伝説の男だった。

十三帝将第一位――真神真人。

――光あれ。

桁違いの神威がそこにあった。
リュシオン。
クリストフ・トゥルー。

天堕する巨大基地。
潰れ破砕し、崩壊する。

天地が鳴動する。
夥しい数の死が作られた。

崩壊する天地の中にあって揺らがない。
何もはかれない。力の総体がはかれないのだ。
蟻がゾウを認識できないように。
彼は全てを逸脱していた。

光が溢れる。

全てが崩壊し残るのはたった一つ――創世神器。

――光あれ。

まるで祝福。

天を疾走する蒼光へ向けて祝福を紡いだ。