65話
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「やはり来たか」
血を浴び立つ者があった。
千を超える屍の中に一人立つ。
人の死骸があった。
魔の死骸があった。
全てを打倒した存在があった。
「貴様の真を見せてみろ」
――真神真人。
巌を形にしたかのような容貌。
真実の人。
真実の神。
◆
「問おう。神とは何か」
「一人でも多くの人間を幸せにする存在だ」
殺したらそれ以上の人間の命を助ければいい。
不幸にしてしまったららそれ以上のものを幸せにすればいい。
――なんて俗物。
つまりは最大多数の最大幸福を求めるのだという。
奴は助ける
奴はやる。
この絶望の淵にあって――
創世神器を手にした者は手を掲げる。
ガルディゲン、リュシオン。
そして十三帝将第一位――真神真人。
そして神風のはじまりにおいて最初の虚神と戦った存在。
凄まじき力。
湧出する魂の理。
創世神器が隆起する。
リュシオンは武力の神器を奪取した。
ガルディゲンは秩序の創世神器を奪取した。
そしてガルディゲンがとろうとした創世神器はをとったのは――伝説の男だった。
十三帝将第一位――真神真人。
◆
――光あれ。
桁違いの神威がそこにあった。
リュシオン。
クリストフ・トゥルー。
天堕する巨大基地。
潰れ破砕し、崩壊する。
天地が鳴動する。
夥しい数の死が作られた。
崩壊する天地の中にあって揺らがない。
何もはかれない。力の総体がはかれないのだ。
蟻がゾウを認識できないように。
彼は全てを逸脱していた。
光が溢れる。
全てが崩壊し残るのはたった一つ――創世神器。
――光あれ。
まるで祝福。
天を疾走する蒼光へ向けて祝福を紡いだ。