62話

悠久ノ風 第62話

62話 


ガルシオンの座は空白。

武宮京士郎、北条時継らの戦い。
そして……

(奴ら……十三帝将も……)

十三帝将が戦っている。

(あいつらは……俺ほど終わってない)

あんな事がありながら、この国のために戦うという狂った精神性は持ち合わせていない。

彼らは彼らの野望があり戦っている。

(――それもまた良し)

魔軍に生じた隙。
僅かな空白。

絶対防御を誇る中枢に魔人級がいない、それだけの事。

(――それもまた良し)

「――創世神器」

草薙が叫ぶ。
――ゼザアアアアァァ
同時に光が顕現した。

ガンドウを倒した時に集束した蒼光。
蒼光が剣を形どる。

「あれは……」

風守の女達はその剣を見た時、感嘆を漏らした。

「まさか……」

――創世神器。

魔人ガンドウを倒した草薙悠弥を覆っていた光の正体。

創世神器の光。
大戦の伝説。
幾多の国敵を滅ぼし
数多の国民を守った伝説の英雄。

虚神――久世零生がふるった
伝説の剣。

国敵討滅――

「長殿!!」

天代が叫ぶ。
蒼光の嵐の中、草薙悠弥は限界を超えようとしていた。

ここで終わりにしてもよかった。

風守は守れた。

だが今や日本は数多の絶望に覆われている。

「国敵を滅ぼし」

ゲスだろうがクズだろうが知った事ではない。

――国民を守る。

そのために草薙悠弥はここにいる。

「長殿……やるのか……」

天代は理解していた。

「奴らの……ガルディゲンの座を潰すのじゃな」

「……ああ」

宿るは確かな意志。

「中央突破だ」

百万の軍勢の頭。
それを潰す。

「ガルディゲェェェン!!」

草薙は天空に吼えた。

「ぶっ殺す!!」

伝説の剣は先端を向けるは――天。
照星のように天に鎮座する大魔界。
百万の軍勢の頭であり中心だった。

遂に伝説の剣がその真を表す。

「これで……」

草薙悠弥が見上げる。

「これが全てが変わる……」

この日この瞬間

「この国の運命……」

日本で苦しんでいる人間がいる。
日本人を苦しめる者達がいる。

故に国民を守る。
故に国敵を滅ぼす。

「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

獅子吼が響く。
風守全体を励起する蒼光。

撃つは魔天。
倒すは神天。

嵐が展開する。

「あなたは……」

「やはり……虚神様……」

創世神器。
剣と一体になる。

「くらっええええぇぇ」

――光が奔る。

ズゴオオオオオオオオオオォォ!!

一瞬だった、蒼光の軌跡を描き
座の中心に突き刺さった。

討滅の意志を宿した創世神器が
文字通りの神業を為した。

震撼する座の中空。

「おおおおおおぉぉ」

創世神器の軌跡が作りだした光の道。

「まさか……」

風守が驚愕を以て草薙をみる。

「――中枢を撃つ」

「!?」

何をいっているか理解できなかった。

衝撃的なその言葉に

「まさか……」

「魔神を討つ」

「草薙様……それは……」
「狂ってるぞ!!」

葉月が思わず叫ぶ。
正気ではない。
死ににいくようなものだ。

「正気か!?」

「……正気じゃろうて、長殿は」

「天代様!?」

「虚神は日本を守るためになんでもしてきた……自身がどうなろうと」

「そんな……ですが彼はもう……十分過ぎるほど戦いました」

「――ガルディゲンは今何万もの日本人を殺している……さっきのガンドウの様にな」

「ガルディゲンが日本に攻め込んできている」

重々しく呟く

「日本中、地獄だ」

草薙の声が響く。

「…………」
くノ一達は言葉を失う。
風守を襲ったガルディゲン。
草薙が助けにくる前の様な地獄が日本中に、地獄を体験したばかりの

「だからやる……」

草薙が拳を握る。

「俺が……この俺が……」

「あいつらを滅ぼす……」
瞬間、励起する光。

創世神器が光を帯びる。
草薙が嵐と化す。

「国敵を討滅する」

――特攻。

――特攻。

ガルディゲン中央の神座に特攻をかける。

自分自身をぶつける。

草薙が飛び立つ。
超スピードで駆ける草薙悠弥。

神ノ風と化し、中央に突っ込む。

――馬鹿野郎。
――愚か者。
――愚の骨頂。

しかしやる。

草薙悠弥は、虚神はそういう存在だからだ。

そして――性質が悪い事に

起動。

「……来ました」

「……来たか」

「……反撃の時が」

「運命の時が……」

草薙の力に共鳴する者達。
全国に配された者達が気づいたのだ。
最強の神理の起動に。

草薙悠弥はこの無茶のために用意をしていた。
協力者となりうるものを全国に配置している。

最強の神理を――

「神風」

神風をふかせるために