お米を食べるだけで褒めてくれる<命>
「何か食べたいものはありますか?」
<命>は俺に優しくそう言った。
今日は<命>からご飯を頂く事になった。
何を食べたいでしょうか?と、命が聞いてきたのだ。
その問いかけに対して俺は
――米
とそう答えた。
「……えっ」
<命>がポカンと口を開けた。
この娘にしては珍しい反応な気がした。
だがそれも一瞬の事だった。
「――まぁ」
ポン、と少女が手を合わせる。
「……あなたはお米が食べたいのですね」
なにやら<命>はたいそう感動したようだった。
目にはうっすら涙さえ浮かんでいる気さえするが気のせいだろう…………ですよね?
「日本人のあなたはやはり素晴らしいです」
命が嬉しそうな笑顔を浮かべる。
俺が「米」と答えた事がさぞ嬉しかったらしい。
まぁやはり米だろう。
俺は只の日本人である。
「ふふっ」
<命>が微笑む。
「やはり、日本人のあなたは凄いです。お米の素晴らしさがわかるのですね」
<命>が褒める。
満面の笑みである。
米食べたいといっただけだけどな!
「待っててくださいね、いまご用意しますから」
彼女はニコニコと幸せそうに笑い、食事の用意をはじめた。
そして――
「どうぞ、召し上がってください」
<命>が暖かい白米をもってきた。
うまく炊けている。
丁寧に白米を持ってきた命。
こめいちんである。
今日は白米だけで良いと言った。
故に白米だけである。
それもまた良し。
「そう。
白米はとてもよいものです」
<命>が米をやたら褒める。
全く、やっぱり日本の米は最高だぜ。
そして俺は白米を食べる。
あぁ……
うまい。とてもうまい。<命>の米は美味かった。
いや、違う。米だから美味いのだ。
正に日本食。
白米はおいしいのだ。
暖かい湯気がたちのぼっている米。
まるで食べる宝石のようだった。
「お米は素晴らしいです。普段から食べているものがものが素晴らしいという
事は、とてもいい事だと思います。
あなたはとてもいいものを食べているのですよ」
<命>が、日本人が普段食べている米の事を褒める。
俺はまた白米を食べる。
やはり――うまい。
単純でありながら豊潤な味わい。
米はうまい。うまいのだ。
質素でありながら仄かなあまみがある。
――あぁそうだ。これなんだな。
この味わいがいいのだ。
単純で深い味わいが、自分は好きなのだ。特別な米でなくともよい。
凡百の米。だが
――それもまた良し
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