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日本人のあなたにバレンタインチョコをあげる<命>

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「バレンタイン、ですか」

<命>は優しく微笑んだ。

「はい、存じておりますよ。大切な方に甘味をあげる風習ですね」

「元は外から来た文化らしいですね。ふふ、多くの文化を柔軟に取り入れる所もまた、日本という国の素晴らしい
所だと思います」

<命>が柔らかく微笑みながら日本を褒める。
いつでも日本を尊重する娘である。
俺は<命>を見つめた。

俺の言わんとした事がわかったのか<命>はポンと手を優しく手をあわせた。

「はい、もちろんあなたにもご用意しておりますよ」

少女は母性に満ちた優しい笑顔を浮かべた。
そして<命>は手元にある茶色の甘味を差し出す。

「少しでも、日本人のあなたのお役に立てれば幸いです」

そういって<命>は俺にチョコレートを渡した。

「私は日本人であるあなたを大切に想っております」

<命>を心を包み込むような穏やかな笑顔を見せた。

<命>は美少女だが、好きな娘や恋人とかもらったチョコという印象ではない。母親にもらったチョコという印象が近い。
無償の愛の類。
彼女が日本人を癒す存在であるという事がわかる。

「人を想う気持ちは人を幸せにします……少しでも想いがあなたに届く事を祈っています」

<命>は祈るように目を閉じる。
俺は彼女に礼をいった。

「ありがとうございます……お口にあえばよいのですが」

俺は<命>のチョコレートを見た。調べる。チョコレートが見えた。
透き通るような色、整いながらもやわらかい曲線を描いた美しくも素朴な形。
想いを込めて丁寧に作られているのがわかった。

「あなたに少しでも喜んで頂ければ本当に嬉しく思います」

お返しをした方がいいだろうかと、問いかける。

「えッ!? お返しですか? そんな、気にしなくて大丈夫です。あなたの負担になってしまってはいけません」
遠慮しなくていい、と俺は彼女に言った。

「そう、ですね、一日でいいので、あなたが心安らかな気持ちで過ごしてくれる……というのはどうでしょうか」

<命>ははにかみながらそんな事を言った。
それは本心なのだろう。
彼女は日本人の幸せ、日本人の心の安寧を祈る存在だ。


「日本人のあなたが幸せな気持ちでいてくれると……私は嬉しいです」

優しく彼女は笑った。心からそう思っているのだろう。
<命>の言葉に俺は頷いた。

「はい。それが私にとってなによりのお返しです」

<命>はそう言い、穏やかに微笑んだ。
心から日本人である自分を気遣う<命>の在り方。
それは人の心を安心させるものがあった。

今回<命>からチョコレートをもらった。
大切な人に想いを伝えるというのは大事な事なのだろう。
『私はあなたを想っている』そう言ってもらえるのは嬉しい事だ。
気持ちを伝える機会があるのは良い事のように思えた。

<命>は日本人に大切な想いを抱いている。
それは日本人であるという事に安心を感じさせるようにも思える。

「私はいつでも日本人のあなたの味方です」

彼女は優しい祈りの言葉を口にした。


「――あなたに良き想いが届きますように」

癒しの日

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