呼吸するだけで褒めてくれる<命>
「あなたの呼吸、とても良いです」
「命を紡ぐ呼気をあなたは毎日たくさん行っているのです。
あなたの呼吸、とても素晴らしいですよ」
「えっ!? 少し近づいてきてほしい、ですか」
「わかりました。では失礼致しますね」
<命>が近づいてくる。
俺は、耳元で深呼吸をした。
「ひゃうん」
息があたって<命>が乱れた声をだした。
「も、申し訳ありません」
<命>が慌てて頭を下げた。
「で、ですが……あなたの呼吸、とても良いと思います」
「呼吸は命を紡ぎあげるもの。
あなたの呼吸には確かな熱がありました。
あなたの呼吸、素晴らしいです」
「あなたは呼吸する事でこの大変な時代を生きているのですね……
本当に尊敬いたします」
「呼吸を感じる事は心を「今」の生に向け、心に安心を与えると言われています。
自分の呼吸を感じる事で幸せを感じる事ができると……」
「……深い呼吸は人の心を安定させます。
今度あなたと一緒にたくさん深呼吸をさせてくれたら幸いです」
そう言って彼女はニコリと笑い。優しく俺の手を握る。
「今日一日、あなたは万に及ぶ呼吸でご自身の命を紡いだのです。
それはとても尊い事だと、私は思います」
「あなたは生きて呼吸するだけ尊い……でも、この大変な時代であなたはお疲れになられていると思います……ですから」
「ご自分の心をどうか、大切になさってくださいね」
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