64話

悠久ノ風 第64話

64話 


――国敵を討つ神風

草薙悠弥が飛翔する。

創世神器が創りだした蒼光の道。

神風と化し、超高速で中枢へ飛翔する草薙はさながら神ノ風だった。

「!!」

超速の異変。
空間の波濤が魔神をうった。

「馬鹿、な…………」

驚愕するガルディゲンの魔神。凄まじい速度で迫る光を知覚する。
魔神の反応速度は尋常ではない。

(ありえないありえないありえない)

生きていた事はありえない。
魔戦将を討滅した事はありえない。

創世神器。

知覚できるはずのない速度で迫る草薙悠弥を認識する。
そして――

「とめっろおおおおぉぉぉ!!」

草薙悠弥を殺すべく魔神はその権能を発した。

これは駄目だ生かしておけぬと吠え猛る。
負けぬ止めるぞやらせはしない。

(きたな……!)
もはや隠す必要はない。
小細工不要。正面突破。
創世神器の力を帯びた草薙悠弥は誰もついてこれないほどに

数多の魔族が飛来する。

「ど、けえええぇぇぇぇぇぇ」
薙ぎ払われる蒼光。
――神薙
閃光の如き煌めきの蒼の光が、幾百の魔族を討ち滅ぼす。

「――俺の国民に」

神理を紡ぐ

「手を――だすなあああぁぁぁ」

死を振りまく魔族を薙ぎ払う。
虐殺を行っていた魔族
局所的な殺人を止めた所で大勢は変わらないが、そんなことは関係ない。
凄まじい速度で進撃しながらも草薙悠弥は国敵を滅ぼしていく。
神風と化した草薙悠弥は次々と魔族を薙ぎ払っていく。

「きたか」

「ついに」

神の如き強者がその光景を見据えていた。

世界の刻が動く瞬間を待っていた。

「はああぁぁぁ!!!」

爆弾の如く至近する魔族を薙ぎ払い
草薙悠弥は進撃する。

狙うは中枢。

「おおおおおぉぉぉ」

翔ける。
翔ける。
翔ける。

高速化する世界の中で、草薙が見据えるのは只一つだった。
コアとなっている中央司令部――魔神の撃滅。
それ一点。

数多の魔物が向かってくるが、神風と化した草薙を止めるには至らない。
バリアは破壊されている。
魔神との鬩ぎ合いそして、創世神器の力によって完膚無きまでに破壊されていた。

「邪魔だああぁぁぁ!!」

檄声と共に風が更に百の魔物を薙ぎ払った。
少しも減速する事なく、草薙は魔物を薙ぎ払う。

――疾る
――疾る。
――疾る。

超高速で草薙悠弥は天を疾る。

ガルディゲンの創世神座に向けて距離が近づく。

恐るべき進撃である。当たり前だ。誰もついてこれないような速度で――単身でここに突っ込むなど
恐るべきに自殺行為。
完全に狂った所業。
特攻を極大規模で実行しているのだ。創世神器という超越の力を使って。
誰にも止められない。
そんな狂った行為への対策は、さしもの魔神も持ち合わせていない。

神ですら止められぬ草薙悠弥の特攻。
それは超越の力だった。

草薙の目に、中枢が映る。

(もう少し、もう少しだ)

励起する魂。
迸る力。
力の反動に自壊する肉体。

そして――

「おおおおおおぉぉぉぉ!!」

全身全霊で草薙は吼え猛る。

――特攻。

幾多の国敵を薙ぎ払う。

草薙悠弥が創世神座に――迫る。