63話
「――国敵討滅」
瞬間、神ノ風と化す
◆
来た
◆
これは
◆
日本全国の地から湧出する神理。
(今なら出来る)
創世神器が有る今なら。
草薙悠弥の神撃と魔神の鬩ぎ合いによって中枢への道が開けた今なら。
魔軍の侵攻にリソースを割き、守りが手薄になった今なら。
全国に配置した48の準備が整いつつある今なら。
草薙悠弥と魔神の鬩ぎ合いによって道筋は見えている。
一つの道筋が見える。
◆
「あなたの民が健やかでありますように」
癒しの光が降り注いだ。
「<命>の心が伝わる。
降り注ぐ癒しの理。
――傷ついた人達は、私が癒します
誠心の言葉。
優しい女性の理。
癒し慈しみ包み込む。
命を育むその理は、この絶望の中にあって安心をもたらすものだった。
――悠弥様の心のままに
後ろから支えるような〈命〉の声。
死地に赴く日本人を支える少女の存在が草薙の後顧の憂いをぬぐい去っていた。
草薙が国敵を倒し、少女が国民を癒す。
(この光景……)
その光景は安心をもたらすものだった。
苦しい者に。
辛い人間に。
助けが欲しい人に。
大丈夫だと、そういっているようだった。
日本人の敵を討滅する。
日本人を癒す。
草薙悠弥と〈命〉。
この二人は見ている人間に絶対の安心をもたらす。
草薙悠弥が風を纏う。
瞬間、世界が反転する。
創世神器から流出する桁違いの理力。
――想いが
――力が
――魂が
草薙悠弥の力に力が集束していく。
――――
光。光だ。
凄絶という言葉ではいい尽くせない力。
人間の器には入りきらないほどの力。
一瞬一瞬体が自壊していくかのような
膨大な力の奔流。
「っ!?」
風守の女達は息を飲んだ。
草薙悠弥の元に力が集まっている。
彼の者が神風そのものになっていると本能的に解悟する。
「おおおおおぉぉ!!」
瞬間、地が滅裂する。
膨大な力が力が力が力が
圧倒的な速度が速度が速度が
「お、おおおぉぉ!!」
刹那飛翔する。
それは正に嵐。
狙うは中枢。
◆
「悠弥様……」
<命>の声には切なる祈りがあった。
「この国を……守ってください」
日本を――草薙悠弥を案ずる声だった。
◆
「……勝つぞ」
天代巫礼には確信がある。
「我らの主は勝つ!」
絶体絶命。
絶対絶望。
だが――
「――それもで草薙なら」
「草薙様なら」
――きっとなんとかしてくれる。
日本を救う神風。
只の日本人の想いを背負いし自称只の日本人。
「神頼み上等じゃみなのしゅうううううううううう!!」
天代巫礼が叫んだ。
神頼み上等、数百年神を奉じた姫巫女の言葉だ。
説得力が半端ではない。
「今この時をもって、天代はその役を全うした!
代わりは必要ない。ここに天がある!
風守本来の主はここに帰還した!!」
草薙悠弥が立つ。
「彼の者こそ天意。彼の者こそ真の守護者」
天代の言の葉に真が宿る。
「国敵を滅ぼし、日本を守る――虚神じゃ」
草薙悠弥が風を起こす。
その姿に風守の者達は神を見た。
人事を尽くして天命を待つ。
人事を尽くして神に祈る。
天代の言葉が無くとも風守の者達は確信していた。
今日だけで草薙悠弥は風守の者を何度も何度も助けたのだ。
故に行動の証明している。
草薙悠弥こそ日本を守る神――虚神だと
「日ノ本の存亡この一戦に在り!今我らの神が戦う。この国を救う!!」
天代巫礼は確信する。
この圧倒的な絶望すらも今の虚神は薙ぎ払う。
――神風となって
「国敵イイイィィィ!!」
瞬間、日本の滅びを滅ぼすため、草薙悠弥は飛翔する。
日本を脅かす敵を討つための風。
それは正に神風だった。