50話
「あっああああぁぁぁぁぁ」
絶望が響き渡る。
嬲られる者。
生きながら心身を潰されていく者。
生きながら魔に心身を
「あっ!?」
エリミナの限界がきた。
「あぐううぅうっ!?」
中から魔気が流れ込んでくる。
いたいいたいいたいいたい。
心が折れそうだ。
だが恐怖がある。
雄々しく戦うなんてできない。
「くっ……ああぁぁっ」
恐怖を押し殺し、エリミナは弓をひきしぼった。
(それでも、ここでがんばらななきゃみんなが)
――ジュガ
「え゛っ?」
肩がなくなっていた。
プシャーーー
冗談のように血が吹き上がる。
「あっああああぁぁ!?」
エリミナが絶叫し、弓矢が手から
こぼれおちる。
魔物の醜悪な面貌が迫る
やだやだやだやだ。
エリミナが必死で手を魔物にうちつける。だが魔物はエリミナの抵抗を嘲笑うようにエリミナの足を折れんばかりに掴んだ。
痛い痛い痛い。
足をとられエリミナの足がひしゃげ――
――ボキリ
骨がへし折れる音がした。
「ひぐううぅ」
激痛にエリミナは絶叫する。
うぐうぅ……
「ゲホゲホォ」
エリミナが血を吐く。
激痛と恐怖が肉体を駆け巡る。
触手が伸び四肢が拘束される。
ヌルヌルした感触、そして異様な力で締め付けてくる。
(いやっいやああぁ)
痛みと生理的嫌悪がせりあがってくる。
エリミナの心を絶望が支配する――
◆
「はぁっはぁっ……」
次々と仲間が倒れる中、アゲハは苦しみ喘いでいた。
死が迫る。
倒された下忍達は次々と触手にからめとられ魔液を流し込まれる。
「あれは……私達を……」
犯し堕とす。
魔族の蹂躙は続いていく
「痛い痛い痛い!」
ゴキゴキゴキゴキ。
折れる折れる折れる。
ジュクジュクジュクジュク。
犯される犯される犯される犯される。
「ああぁぁーーー」
骨が砕ける。
血が噴出する。
「ゲホォっ!?」
肉体が貫かれ魔気が流し込まれる。
アゲハの全身に痛みと被支配の
(あっ、ああぁぁぁ!?)
激痛と生理的嫌悪が凄まじい勢いで心身を犯していく。
「あああぁぁ!!」
入ってくる。
おぞましいものが流れ込んでくる。
必死でふりほどく。
アゲハが這いつくばって逃げようとする。
魔物が嗤う。
狩りを楽しむようにゆっくりとアゲハを追う
「ひっ、ひぃっ……」
アゲハは這いつくばる。
ただ殺されるよりも何倍もおぞましい恐ろしさが魔軍から感じられた。
(怖、い)
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
これまで感じた事のないような、恐怖がアゲハの底から沸き上がってくる。
◆
「冗談が……きついどすえ」
深く息を吐く。
魔戦将ザンカイを押しとどめていた、タマノも限界だった。
「じねえええぇぇぇぇぇ!!」
魔戦将ザンカイが巨大な魔撃を放った。
「っ! あ゛あぁぁぁっ!」
巨大質量と範囲を有するサイクロプスの魔撃が
タマノをうった。
◆
「はああっ!」
葉月は奮闘していた。
体が軋む。
意識が霞む。
限界を超えた力の稼働は葉月を容赦なく蝕んでいた。
(まだだ、まだ、まだ)
「クヒヒッ」
魔戦将スパグナーが指をあげた。
うねる魔鋼糸が葉月の腰をネットリと絡め取る。
「くっ」
「クヒヒヒヒヒ!」
「!!」
魔鋼糸が締めあがる。
「ゲホッ、オ゛アアァ!!」
激しく肉体を締めつけられる苦しみに葉月は喘ぐ。
「クヒヒヒヒ」
血が喉に詰まってる。
痛い痛い痛い痛い。
痛みと苦しみが体中を駆け巡る。
(まだ、まだ)
――ザン
魔の一撃が葉月を嬲った。
「あぐっ!?」
ボロ雑巾のように葉月が吹き飛んだ。
「葉月ちゃぁぁん!!」
早綾が絶叫する。
葉月は崩れ落ちた。
(あぁっ……)
息が出来ない。肺が潰れた。
周りの守護者達も傷つき倒れている。
「あぁっ……あっ……」
絶望に心が侵食される。
心も体もボロボロだった。
――絶望を捧げよ。
天に鎮座する魔が箴言を発している。
――死に絶えろ。
もはや希望はどこにもないと――魔が咆哮した。