第2話 戦争とは何か
「――戦争とは何か」
それは歴史において数多のモノが問うた問い。
世界が。
国家が。
政治家が
兵士が。
貴族が。
平民が。
奴隷が。
数多の者達が問いてきた。
曰く神のための戦い。
曰く国家間の紛争。
曰くテロとの戦い。
曰く経済手段。
曰く拡大された決闘。
曰く曰く曰く曰く――。
(全て正解だね。そして間違いでもある)
「戦争とは何か」
戦争とはなにか、その問いを彼もまた問いている。
――志公方秀世。
所属国――日本。
外見は壮年。
四十を超えているだろうと思われる外見だが、男は
それ以上の貫禄を持っていた。
リュシオンと太いパイプを持つ政治家である。
彼には様々な逸話がある。
志公方が一室で駒をさしていた。
場所は国世院。日本の政治の中枢。
既に会議を終えている。
さしているのは将棋――だが只の将棋ではない。
古の時代の将棋である古将棋。
その古将棋の中でも最大最後の規模を有する、大局将棋といわれるものだった。
巨大な盤上。駒の種類も数も桁が違う。
まともにさす事ができる者は殆どいないだろう。
その大局将棋を、志公方秀世は迷いなくさしていた。
志公方の相手――巨大な盤上の向こうには空の席。
相手は――いない。
否、見えないのだ。
志公方の対面にあるのは空位の席。
だが駒だけは動いている。
その駒の動きも尋常ではない。
先へ、一歩先へ。膨大な選択肢から選ばれる最適解。
だが志公方の指し手としての技量も尋常ではない。
次々に最適解を導き出し駒を動かす。
それは対峙する空位の指し手も同様だ。
将棋の種類も、対局相手も常軌を逸している。
だがその一見常軌を逸した対局を、志公方は眉一つ動かさず駒を進めていた。
駒をさす。
(さてと……ガルディゲンも動く……彼等も動く)
既に万事を尽くし万策をしいた後。
後は時がくるまで、心を研ぎ澄ます。
それが運命の時がきた時の最大の備えだという事を志公方秀世は解悟していた。
大局の駒を一つさすたびに一つシンリが冴えていくのを志公方は感じていた。
――戦争とは何か
運命が動く。日本の命運が決まる。
運命の時が迫る中、志公方秀世は戦争のシンを問うていた。